
世界レスポンシブルツーリズム
アワード2019総合優勝!
ヨルダン旅行で泊まりたいエコロッジ
2004年に始まった世界レスポンシブル・ツーリズム・アワードは毎年ロンドンで行われる世界旅行博、世界観光マーケット(通称WTM)で授賞式が行われています。(アワード概要についてはこちら)
レスポンシブルツーリズムは日本語にすると「責任ある観光」。環境に対して社会的責任をきちんと果たしているか、がこのアワードの焦点となっています。観光業界でのサステイナビリティ、持続可能性についての関心が年を追うごとに高まっていることを受けて、ファイナリストらのレベルも毎年上がっているとのこと。そしてレスポンシブルツーリズムに重要なのは透明性。その観光ビジネスがなぜその課題に立ち向かっているのか、具体的にどんな対策をしているのか、そしてその結果どのようなインパクトを与えているのかという情報を明確にしているかどうかです。
環境に優しい旅をするには、環境に配慮し社会的責任をきちんと果たしているホテルやツアーを選びたいですよね。
では、サステイナブルな旅を自分で計画する際に参考になる、世界中から選りすぐりのサステイナブル企業、今回は2019年の総合優勝者を見てみましょう!
2019年総合優勝: フェイナン・エコロッジ(ヨルダン)

ヨルダンのフェイナン地域とその周辺は、ベドウィン族、「砂漠の住人」の4つの部族が住んでいる地域で、新石器時代の遺跡もあることから考古学的にも重要な地域です。フェイナン・エコロッジはダナ生物圏保護区の南西にあり、王立自然保護協会(RSCN)によって建てられました。30年にわたり銅の採掘が行われていましたが、地元のベドウィンコミュニティに銅山に代わる持続可能な経済的利益を得る機会を提供しています。
フェイナン・エコロッジは、以前に「地域社会へのポジティブな影響」というカテゴリーで賞を受賞しており、2011年レスポンシブル・ツーリズム・アワードの「貧困削減」カテゴリーでも高く評価されました。フェイナン・エコロッジは、現地住民の雇用や現地生産された製品の使用などにより、地域社会に社会的・経済的にポジティブな影響を与えていることや、地元のベドウィン文化体験の高いクオリティで知られています。そのため、10年間以上観光業界の中で他企業から「目指すべきモデル」として認識されていました。
ついに2019年、二酸化炭素排出量をさらに削減するための努力と削減された影響の報告のクオリティが高く評価され、総合勝者としてフェイナン・エコロッジが選ばれました。
フェイナン・エコロッジは、取組みの結果環境に与えた影響を数値化するために使用した元のデータや情報源について明確に示した上、年間11.13トンの炭素排出量を削減しています。
環境に配慮した運営
フェイナン・エコロッジでは、可能な限り環境への影響を最小化することを目的としたさまざまな取り組みを行っています。
エネルギー
太陽光発電: フェイナン・エコロッジには電線が届かないため、屋上に設置された太陽光・太陽光(PV)パネルで自家発電し、バッテリーに蓄電しています。そして蓄えられたエネルギーを効率的に利用するために、どうしても必要な電化製品のみ、エネルギー効率の良い製品を使用しています。また、キッチン、洗面所、オフィスに限って、低エネルギーのLED電球を照明に使用。キッチンの冷蔵庫などの電化製品は、Energy Star(米国の評価)またはA / A +(EUの評価)の認定を受けたもの。そして洗濯物は空気乾燥し、エネルギーを消費する乾燥機の必要性を減らしています。その結果、毎日の電力使用量は16〜18 KW/時に制限されています。
ソーラーヒーティング:水を加熱するために、キッチン、ゲスト、洗濯機に必要なすべての温水を提供する大規模なソーラーヒーティングシステムが設置されています。
暖房:フェイナンは非常に暖かいため、暖房が必要な期間は1年のうちほんの短い期間だけ。毎年冬の60〜90日程度、夜のみ、オリーブプレスまたはオリーブピットの木炭からの廃棄物をロッジの2つの暖炉で燃やし、暖房を提供しています。この時使用する廃棄物、ヨルダンのオリーブ収穫の自然副産物である再生可能なもので、エネルギー源として活用しています。
水の消費量の制限:ヨルダンは世界で最も水が不足している国の1つ。ロッジでは地元の湧き水から水を調達しています。キッチンの水の使用は厳密に制御されており、各部屋の蛇口からの水も制限しています。
廃棄物
堆肥化:廃棄物を最小限に抑え、資源を活用するために、ロッジには余った生食品と廃棄物を有機肥料に変換する堆肥化施設があります。
廃棄物のリサイクル:ロッジで使用される紙とプラスチックの量は最小限ですが、ほとんどの廃棄物はリサイクルされ、ゲストも参加できるようにリサイクルのゴミ箱がロッジの周りに配置されています。
使い捨てペットボトルの排除:ロッジではプラスチックの使用を制限し、ゲストにも同じことをするよう奨励しています。地元で製造された粘土製のジャーでお客様に水を提供し、使い捨てのペットボトルを排除。ハイキングや小旅行に持っていける、再利用可能なウォーターボトルも用意されています。ロッジでボトルを補充するための無料の水ステーションまで完備。こういった取り組みにより、毎年13,000〜15,000の使い捨てペットボトルの削減に成功しています。
収益の保全活動への活用
さらに、滞在しているゲストからの収益は、保護区内の他の保全活動に使用されるとのこと。
地域コミュニティにも貢献
地元住民を雇用:
フェイナン・エコロッジで雇用されているスタッフは、全員地元コミュニティの住民。現地のスタッフが働くことで、ロッジに独特の「本物」の雰囲気を作り出すことができ、地域コミュニティに必要な収入を生み出しています。
サービス提供のため地域社会と連携:
さらに、地元住民に補足的な収入を提供するため、地域社会からサービスを調達しています。
- 地元の運転手がロッジへの送迎シャトルサービスを提供。その際、ゲストが支払うすべての料金は運転手の収入となり、地元のベドウィンコミュニティの45を超える家族に恩恵をもたらしています。
- ほとんどの食料は近くの村から調達。
- ロッジが提供するパンは、家族と暮らすテントで地元のベドウィンの女性が焼いたもの。
- ロッジで使用されるすべてのキャンドルと革製の家具は、ロッジで開催される、現地住民による革製品とキャンドルのワークショップで購入されたもの。
- ロッジのショップでは、自然保護区の地元コミュニティの多くの職人が作った工芸品やアートワークを展示、販売。
- ベドウィンの伝統的な暮らし方が体験できる文化体験プログラムを導入し、現地コミュニティにさらなる経済的サポートを提供。これらの参加料金は体験をホストした現地家族に直接支払われます。
- ロッジでペットボトルの代わりに使用される粘土製の水瓶は、地元の女性が陶器を作って収入を得ているペトラ近くの女性協同組合から購入されたもの。
- 食料やその他の供給品の80%以上がロッジから半径40 km以内で購入されたもの。
フェイナン・エコロッジは、地元コミュニティ約400人、80家族に直接恩恵をもたらしているそうです。ここまで様々な取り組みをしているところがあるとは、嬉しい驚きではないでしょうか。
環境を保全し、地元のコミュニティにも利益を還元し、その取り組み内容やインパクトを明確に伝え透明性を持たせること。こういった活動が世界中で行われるようになるためにも、私たち旅行者は積極的に頑張っているところを利用し、こういう取り組みをしているところが旅行者から選ばれるということを示していきたいですね。
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