密猟とエコツーリズム
野生動物保護

エコツーリズムで野生生物を密猟から守る

野生生物保護に対する世界最大の脅威とも言われる、密猟。密猟とは、野生動物の違法な狩猟、捕獲、殺害のこと。本質的に違法であり、完全に監視できていない状態にあるため、正確な影響を数値で出すことは難しい、密猟。しかし、密猟によって様々な生物が絶滅の危機に瀕していることはよく知られています。密猟の被害を減らすためにも、野生生物保護の専門家はエコツーリズムを推進しています。

なぜ密猟が起こるのか

密猟は世界のどこでも発生する可能性がありますが、最も被害が大きいのは、アフリカと南アジアおよび東南アジアのサバンナ。野生動物が人間によって殺されるほとんどのケースが、

1)狩猟された動物の一部に市場または文化的価値がある

2)動物の存在が人間の開発を妨げている

3)トロフィーハンティング

のいずれかの理由で発生しています。

まず最初の「狩猟された動物の一部に市場または文化的価値がある」という点。一般的に「密猟」というとこの理由が頭に浮かぶことが多いですよね。これは、密猟される動物が、市場価値の高い動物が多いということです。 

2008年のある調査では、1キロの象牙が最大900米ドルの価値があり、1キロのサイの角が最大50,000米ドルの価値があるということがわかっています。一部の農村コミュニティにとって、このような大きな利益があるとわかると、抵抗するのが難しいのかもしれません。一部の文化では、特定の動物の部分が貴重な薬効がある(科学的に証明されていないとしても)と信じられており、高値で取引されている場合もあります。

次に、「動物の存在が人間の開発を妨げている」ケース。農地を伐採または拡大するとき、開発者や労働者は、その作業を妨げる可能性のある動物を捕獲するため、罠を仕掛けることがあります。あるいは、人間が野生生物の生息地に侵入して農業や牧畜を始めると、そこに住んでいた野生動物は食料源として家畜を襲ったり農作物を荒らすため、その土地の所有者や利用者が野生生物を排除しようとします。

最後に、「トロフィーハンティング」。トロフィーハンティングは、家に飾る剥製のためや、競争のために動物を殺すことと定義されています。トロフィーハンターはアメリカ人が多いと言われており、象やライオン、サイやヒョウを「賞品」として探すことがよくあります。これらのハンターは成体のオスを殺すことを優先しており、絶滅危惧種の個体数は危険なほど少なくなっています。

エコツーリズムのメリット

特に最初の理由である収入のための密猟を防ぐため、野生生物保護の支持者は、収入源として密猟よりもエコツーリズムを奨励するプログラムを開発しました。これは、地域の野生生物を観察し、学びたい旅行者を支援することを中心に設計されたエコツーリズムで、地域経済の構築に焦点を当てています。

グローバル・エコツーリズム・ネットワーク(GEN)によると、エコツーリズムは「環境を保護し、地元の人々の幸福を維持し、関係者全員の解釈と教育を通じて知識と理解を生み出す、自然地域への責任ある旅行」と定義されています。

エコツーリズムが野生動物を密猟から守った事例

密猟に取って代わるエコツーリズムの一例として、マレーシアのティドン野生生物保護区(TWR)のケースをご紹介しましょう。 TWRには、ピグミーゾウやオランウータン、ウンピョウ、そして非常に珍しいスマトラサイが生息しています。

プログラムの開始前、TWRの周辺の村では、多くの人が保護区内で、家族を養うための肉だけでなく、市場で追加収入を得るために売ることができる野生動物の角や牙を探していました。 2002年から、ボルネオの生物多様性と生態系保全プログラムは、地域コミュニティの住民にマネジメントとマーケティングについての教育を行い、村人に狩猟と密猟を完全に止めるよう促し、ホームステイスタイルのエコツーリズムのベンチャープロジェクトを開始するため、スタートアップ資金の提供を開始しました 。

2007年に終了したこのプログラム、地域コミュニティは、5年間で毎年2,000人を超える旅行者からの収入を得ることができ、生活水準が大幅に向上。プログラム終了時には、地域住民は野生動物を守ることは彼らの新たな収入源であり、野生生物の保護に専念することの重要性について理解し、 TWR周辺の密猟は減少しました。

しかし、このプロジェクトで残念だったのは、プロジェクト終了後、ベンチャープロジェクトへの資金提供が取り下げられた際、コミュニティはエコツーリズムプロジェクトを独自に実行し続ける準備ができていなかったこと。 2010年までに、このプログラムは年間100〜200人の旅行者しか受け入れることができませんでした。結局、エコツーリズムでの収入がなくなれば、地元の村の多くの住民が、生活のため再び狩猟や密猟を始めてしまいます。

エコツーリズムは、世界中で密猟が問題になっている地域コミュニティに、密猟によって生み出された収入を、野生生物を保護して得られる観光収入、つまり旅行者からの収入に置き換える素晴らしい機会を提供しています。エコツーリズムのプログラムやそれを実行する地域コミュニティを支援することは、密猟による野生動物への被害を逆転させるための重要な一歩。今後、海外旅行を計画するときは、自然や野生動物に配慮したエコツーリズムを選び、間接的に自然や野生動物を守るサポーターの1人になってみてはいかがでしょうか。

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