旅行が自然に与える影響とは
環境問題

旅行が自然に与える影響とは

観光は、世界で急速に成長している産業のひとつ。国家レベルでも地域レベルでも、旅行は経済と環境両方に影響を及ぼし、将来の発展にも大きな影響を与えています。旅行は環境にどのような影響を与えているのでしょうか。今回は、旅行が自然に与える影響と、悪影響を根絶するための持続可能な取り組みについてご紹介します。

旅行は環境にどんな影響を与えるのか

大都市だけでなく、大自然に恵まれた人里離れた地方においても、観光が与える影響はとても大きいもの。世界中にあるたくさんの小さなコミュニティにとって、観光業はライフスタイルや伝統を維持するための収入を得る機会になっています。もちろん、その地域に多くの利益をもたらしますが、同時に負の影響ももたらすということを忘れてはいけません。

観光がもたらす悪影響の中で最も懸念されるのは、自然の劣化や消滅、枯渇などです。自然と観光の両立について、長期的な計画と保全を念頭に置いて対策がなされなければ、その地域の自然は破壊されてしまう可能性もあるのです。

世界でみると、たくさんの旅行者が訪れたことによって自然が破壊されかけてしまい、ビーチや湾など、特定の地域が閉鎖されてしまった場所も。その影響は、土壌浸食や汚染の増加、海への汚染物の流出、動植物の生息地の損失、絶滅危惧種への圧力の増加、森林火災に対する脆弱性の高まりなど多岐にわたります。

観光による自然破壊 

ボラカイ島(フィリピン) 


フィリピンのボラカイ島は、観光による環境への悪影響とゴミによる自然破壊のため、閉鎖を余儀なくされてしまいました。このエリアで旅行者の増加によって起こったのが、無秩序な開発と生ゴミを海に流すパイプによる汚染物の流出です。

ゴミの海洋投棄を止めるようフィリピン大統領が何度も警告したにもかかわらず、ボラカイ島全体が6ヶ月間閉鎖されることに。この人気観光地は、目まぐるしい開発と増加する汚染によって脅かされています。

ボラカイ島閉鎖の影響は、旅行者にとっては訪れることができない、現地の人にとっては観光収入がストップするというマイナス面もありますが、閉鎖によるプラスの影響がマイナスをはるかに上回ったのも事実。閉鎖されたことにより、環境に対する規制が整備・実施され、サステナブルな方法できれいな状態にすることができました。元々あった自然の美しさを取り戻すことができたのです。

マヤベイ(タイ)


タイにあるマヤベイもまた、オーバーツーリズムによって自然破壊が起こった場所。のどかなピピ・レイ島にあるマヤベイは、映画「ビーチ」で有名となり、毎日おびただしい量の旅行者が訪れていました。ターコイズブルーの海、パウダーのように柔らかい砂浜、そびえ立つ石灰岩の崖が美しい、世界中の旅行者を魅了する場所です。

しかし、残念なことにかつて息をのむほど美しかったこの入り江は、汚染されてしまいました。専門家によると、旅行者を運んでくるボートによる汚染が、かつては手つかずだったこの地域のサンゴ礁を破壊する一因になっているといいます。そして、ボートの汚染に加え、旅行者の落とすゴミや体につけている日焼け止めが、マヤベイ周辺のサンゴ礁の80%以上を破壊したと推定されています。

観光による悪影響に対抗し、海洋生物やサンゴ礁の回復を助けるために、この地域は閉鎖されることになりました。現地政府は、これ以上の浸食を防ぐため、サンゴ礁に植林を行い、ビーチのそばにも木を植えました。この閉鎖は、オーバーツーリズムによる自然破壊と言えるでしょう。

マヤベイが数年間閉鎖されたことでデリケートな生態系が回復し、規制やルールが徹底され、これからの世代がまたその美しさを楽しめるようになりました。

旅行は、世界中の美しい観光地で、自然破壊を引き起こし、悪影響を及ぼす可能性があります。私たち一人一人の旅行者も、あまり知られていない観光地を訪れたり、訪れた地域にどんな影響を与えているかを意識することで、この問題に立ち向かっていきたいですね。

環境に優しい旅についてもっと知りたいですか?
次の旅のインスピレーションに、忙しい毎日のちょっとした息抜きに。
Ecotourism Worldのニュースレター配信登録はこちら

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *