
ヨーロッパで
最近人気の旅行スタイルとは?
「レスポンシブルツーリズム」という言葉を聞いたことはありますか?日本ではあまり馴染みがない言葉ですが、実はヨーロッパでは今、レスポンシブルツーリズムという旅行スタイルが人気を高めています。
レスポンシブルツーリズムとは、「レスポンシブル=責任のある」「ツーリズム=旅行」、すなわち旅行者が責任を持って環境に配慮する旅行スタイルのことを言います。
旅行の持続可能性は、ホテル産業、政府、地域、など旅行に関わる様々な関係者によってなされるものであり、その関係者の中にはもちろん、旅行者も含まれています。では、旅行における旅行者の責任、とは一体どのようなことを指すのでしょうか。旅行者の責任とは、食事や移動手段、買い物などの旅行における様々な行動において、持続可能な選択をし、行動することを指します。
ヨーロッパでは今、環境問題や社会問題を懸念する人が増加しており、それに伴って持続可能な選択をする旅行スタイルが人気を集めているのです。
ヨーロッパ旅行で実践したい
環境に配慮した行動
ヨーロッパで旅行をする際に、どのような行動をとれば持続可能な旅行ができるのでしょうか。ヨーロッパ事情に照らし合わせながら、どんな選択や行動ができるかを見ていきましょう。
① 水の無駄遣いをしない
日本は水が豊富なため水不足を心配することは少ないですが、実はヨーロッパでは水不足が深刻な問題となっています。欧州委員会によると、なんとヨーロッパ全土の17%が水不足の影響を受けている、と言われています。水の節約をするための行動としては、例えば、ホテルの部屋のドアに「Please Do Not Disturb(清掃は必要ありません)」のサインをかけ毎日の掃除を断ることが挙げられます。ホテルではタオルやシーツの洗濯には毎回大量の水が使用されます。ホテル側は宿泊者の希望にそってサービスを提供するので、旅行者自らが積極的に意思を示すことが、持続可能な旅行への第一ステップとなります。
② 旅行先にもマイバッグやマイボトルを持参
旅行産業による廃棄物量は地元住民が排出する廃棄物量の約2倍にものぼると言われています。また、最近は特に使い捨てプラスチックの廃棄による環境汚染が世界的に問題となっており、例えば英国では2018/2019年に大手小売事業者が人口ひとり当たりに提供したビニール袋の枚数はたったの10枚に抑えられています。旅行者としてもビニール袋の大量使用は避けたいところですね。でも、買い物は旅行の醍醐味のひとつですから、旅行中はマイバッグを持ち歩くことをお勧めします。もしマイバッグをまだ持っていない人は、旅行先でお気に入りのマイバッグを見つけてみるのも良いかもしれませんね!
また、日本でも浸透しつつあるマイボトルですが、ある調査によるとイギリスでは36%もの人がマイボトルを日常的に活用しているそう。旅行中はどうしてもペットボトルを購入してしまいがちですが、水が補給できる場所を掲載しているウェブサイトもあるので、マイボトルを持参して活用してみるのはいかがでしょうか?
③ 農村ツアーに参加

日本と同様に、ヨーロッパの地方の中には人口減少が急速に進んでいるところがあり、そのような地域では経済が停滞し、貧富の差が拡大することが懸念されています。地方における主要な産業は農業です。農園ツアーに参加し、農園で地元の獲れたてのおいしい食べ物と美しい農園風景を楽しみ、リラックスする日を1日作るのも良いのではないでしょうか。地方の活性化にも繋がりますし、きっとよい思い出になることでしょう。例えば、フランス・パリから車で1時間のところにあるVal d’Oiseでは伝統的な農業が今でも続けられており、 La Route des Gourmetsではこの地域への日帰りツアーを提供しています。野菜、蜂蜜、スパイス、ブドウ園などの農場を案内してくれますよ!
④ 現地での移動手段は電車や自転車に
ヨーロッパでは二酸化炭素の排出を抑えるために、飛行機の代わりに電車を、自動車の代わりに自転車を使う、といった動きが拡大しています。ヨーロッパは電車で国間を移動することができ、また電車は美しい景観を楽しむことができるので、筆者としても電車はヨーロッパの長距離移動におすすめの移動手段です。また、ヨーロッパは自転車先進国として知られており、例えばドイツでは2016年に自転車専用の高速道路が開通しているなど、自転車のインフラが整備されています。多くの都市では自転車のレンタルサービスが充実していることから、自転車に乗って街の景観を楽しみながら観光スポットを巡ってみるのも良いですね!
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⑤ ビーガンのレストランに行ってみる
畜産産業はメタンという温室効果ガスを大量に排出することから、ヨーロッパでは地球温暖化を懸念し肉の消費を避ける動きが強まっています。その影響もあり、動物由来の食品を一切摂らない“ビーガン“の数が増えてきています(ベジタリアンが肉や魚を摂取しないのに対し、ビーガンは卵や乳製品、はちみつ等も摂取しない)。Happy Cowというウェブサイトによると、英国では人口の1.16%がビーガンであり、首都ロンドンの中心部の半径5マイル以内にはビーガンメニューのみを提供するレストランが152店も存在します(2019年3月時点)。また、フィンランドやスウェーデンではマクドナルドでビーガンメニューを提供しているなど、ヨーロッパでは大手チェーン店でもビーガンメニューを提供しているところが数多くあります。美味しいビーガンレストランがたくさんあるので、これまでビーガン料理を食べたことがなかった人も、ヨーロッパ旅行を機に一度ビーガン料理を試してみてはいかがでしょうか。
今回はヨーロッパで人気のレスポンシブルツーリズムとして、私たちが実践できる5つの行動をご紹介しました。ヨーロッパでは環境問題に関心を寄せている人が多く、旅行においても持続可能な選択肢が豊富にあります。ヨーロッパに旅行に行く際は、ぜひ持続可能な旅行スタイルを実践してみてください。
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【綾夏】
気候変動政策を専門とするコンサルタント。ボルネオ島にてオランウータン調査の経験を持つ。より多くの人が環境問題に関心を持つきっかけとなるよう、エコツーリズムの魅力を発信している。

