まちやど:本物のローカル体験ができるサステナブルな仕組み
文化体験

まちやど:
本物のローカル体験ができる
サステナブルな仕組み

世界の、特に欧米の旅行者たちは昨今、サステナブル(持続可能性)に対する意識が高まり、旅行でも母なる自然への潜在的な影響に配慮することを望み、サステナブルな選択肢を選んでいます。サステナブルな旅とは自然だけではありません。観光客のために作られた見せ物ではなく、本物の文化的体験への関心も高まっています。

実際は、旅行で訪れた土地で本物のローカル体験をしたくても、ツアーが提供されているような中規模以上のホテルでは観光客向けのものしかない場合も多く、旅行者として参加できるものを探すのは意外と難しいかもしれません。

しかし、町全体がひとつの大きな宿のように機能したらどうでしょうか。このモデルは、旅行者にとっても、地元のホテル&ビジネスにとってもメリットがあり、持続可能な観光都市を作り上げることができます。

今回は、この「町全体をひとつの大きな宿のように機能させる」手法を実践している場所をご紹介します。

アルベルギ・ディフージ(イタリア)

最近、ヨーロッパの一部で観光都市づくりが流行っているようです。イタリアでは「アルベルギ・ディフージ」(Alberghi Diffusi)と呼ばれており、アルベルギ・ディフージとは簡単に言えば、ホテルをひとつの建物や複合施設に限定せず、町のあちこちにある複数の歴史的建造物やローカルな建物に広げるという考え方。レセプションやレストラン、共有スペースは通常、中央の建物に配置され、客室は近隣のさまざまな建物に分散して配置されます。

これは、旅行者にとっては実際の町の中で暮らす本物の体験となり、地元企業にとっては収入を得る機会となります。

1976年のイタリア、フリウリ地方での壊滅的な地震の後、現地の人々が選んだ戦略にヒントを得たこのホスピタリティ・モデル。町の経済的安定を取り戻すため、彼らは修復された家屋を観光用に再利用したのです。観光マーケティングの専門家であるジャンカルロ・ダッララ教授は、この革新的なコンセプトを開発し、イタリア全土に広めることにしました。1998年、アルベルギ・ディフュージはサルデーニャで正式に認められ、ユニークで持続可能な宿泊施設としての地位を確固たるものにしました。

小さな町の中から好きな宿を選び、イタリアの豊かな文化を体験してみませんか。


まちやど(日本)

ここ日本でも、同様の取り組みが行われています。それが、周辺地域に宿を広げることを指す、まちやど。近代以前の日本には、江戸時代に街道沿いに一定間隔で設けられた宿場町という概念がありました。宿場町は、食事、入浴、観光、宿泊などさまざまなサービスを提供する、旅人にとって重要な休憩所でした。まちやどは、旅人を宿泊させる本来のシステムを復活させることで、日本の歴史的ルーツに立ち戻ろうとしています。

この伝統的なシステムから着想を得て、過去の本物の体験を再現し、現代に蘇らせることを目指しているのが「まちやど」なのです。オリジナルの宿場町と同じように、まちやどの施設は戦略的に配置され、滞在するゲストのニーズや関心に対応できるよう、さまざまなアメニティやアクティビティを提供しています。

持続可能な取り組みとしての観光都市

上記のコンセプトはいずれも、持続可能でコスト効率の高い方法で町の旅行産業を発展させるという同じ考えに基づいています。観光都市は、環境に優しい慣行を取り入れ、宿泊客に責任ある旅行を奨励することで、環境フットプリントを抑えて運営されることが多いのが特徴。さらに、地元企業を巻き込んで支援することで、地域社会の経済成長を促し、地方の過疎化対策にも貢献しています。

日本の「まちやど」やイタリアの「アルベルギ・ディフュージ」は、文化遺産の保護、地域社会との関わり、環境スチュワードシップを優先した持続可能な観光の取り組みです。歴史的建造物を再生し、地域社会と関わり、責任ある旅行慣行を推進することで、旅行者にユニークで本物の体験を提供すると同時に、現地の持続可能性と地元住民の生活に貢献しているのです。

世界が「持続可能な旅行とは何か」を模索し続ける中、観光都市を作るという戦略は、旅行がいかに前向きな変化のきっかけとなり、文化的な宝を守り、より持続可能な未来を育むことができるかを示す、刺激的なモデルとなっています。

一度、町をそのまま体験できるこういった取り組みを行っている町を訪れて、実際体験してみませんか。

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