
ダイビングからエコダイビングへ:
環境に配慮したダイビングのこれから
スキューバダイビングをしたことはありますか?ダイビングは水の中の世界を探検できる上、自分の呼吸音だけが響き渡る中、リラックスして水中散歩することができます。潜るたびに新しい発見があるダイビングでは、海の生き物を脅かすことなく観察することができます。そのため、ダイビングはサステナブルな活動に興味があり、自然を楽しみたい世界中の人々の間で非常に人気があります。
ところで、スキューバダイビングは本当にサステナブルな活動なのでしょうか?自然環境に悪い影響を与えないのでしょうか?もし与えているのなら、どうすれば改善できるでしょうか?環境に配慮したダイビングとはどういうもので、海洋生物にとってどんな良い影響があるのでしょうか?
この記事では、ダイビングが近年どのように変化したか、そして将来を担うの若者たちを海の保護していく者として育てていくために、エコダイビングがどのように貢献していくかについても考えてみたいと思います。
1997年、海洋生物学者のチームが、スキューバダイビングが海洋環境に及ぼす可能性のある悪影響を調査しました。
この調査によって、その当時オーストラリアのグレートバリアリーフ(地球上で最大のサンゴ礁)でダイビングツアーを楽しんでいる旅行者は、なんと30分ごとにそれぞれ平均1〜2個のサンゴ礁を壊していたことが判明!
一部のサンゴ種は壊れるのは一瞬ですが、再成長するのに数十年(またはそれ以上)かかります。ダイビングを何度か体験したことがある人は、ダイバーが水中でなかなか安定できず、岩や動物、時には他のダイバーにぶつかるのを目にしたことがあるのではないでしょうか?
ダイビングをよりサステナブルなアクティビティへ
調査が出した90年代におけるサンゴの被害数は、ダイビングがそれほどサステナブルではないかもしれないと示唆しているようですが、調査結果すべてが悪い内容だったわけではありません。オーストラリアの研究者たちは、希望が持てるデータも見つけました。大多数のダイバーは、数時間の水中滞在を含む長いスキューバダイビング中、サンゴに損傷を与えることはありませんでした。ほんの少数のダイバーが30分ごとになんと10〜15/人のサンゴを壊していたのです。ダイバーひとり当たりこんなにも多くのサンゴを傷つけていたなんて、ショッキングですよね。
この少数のダイバーとは、2種類のタイプの人たちでした。まったくの初心者、そして何年もダイビングから離れていてトレーニングを忘れていたダイバーです。
この調査結果により、ダイビング自体は環境に対して悪い影響が大きい活動ではないけれど、ダイバーはより良い訓練を受ける必要があるということがわかりました。
1997年以降、状況は変わったでしょうか?過去25年間で改善したのでしょうか?
幸いなことに、状況は変わりましたし、改善しました!ダイビングや観光産業が成長し続けるにつれて、ますます多くの旅行者が環境に深く関心を持ち始めました。ダイビングをする旅行や体験ダイビングなどのアクティビティをする旅行者は自然が好きで、自然を大切にしたいと思っており、時が経つにつれて、より多くのスキューバダイバーが海とその生き物の保護を支持するようになりました。
ダイビングのトレーニングエージェンシーは、トレーニングプログラムの品質の中でも特に浮力制御、つまり浮くことも沈むこともせずに水中での位置を維持する能力に重点を置き始めました。言い換えると、浮力制御は水中で私たちの体を完全にコントロールする能力ということです。
ダイビングインストラクター専門家協会(PADI)は、「スキューバレビュー」と呼ばれるトレーニングプログラムを開始。このプログラムでは、資格のあるインストラクターの監督下で、長期間海から離れていたダイバーが基礎を確認、再び学び直すことができます。
さらに、世界中のダイビングセンターは、旅行者のダイビングレベルに関係なく各ダイビングツアーの始めに「チェックダイブ」を行うようになりました。チェックダイブは、潮流が穏やかでダイビングの影響を受けやすい海洋生物がいない場所で行われます。ガイドに気軽に質問したりしながら、リラックスした環境でチェックを受け、スキルを再確認することができます。
また、新世代のダイバーのトレーニングに焦点を当てたNGOのグローバル・アンダーウォーター・エクスプローラなど、新しいダイビングトレーニング機関に資金が提供され、しっかりと基礎のスキルを学ぶことに焦点が当てられました。基本となる考えは至ってシンプル。ダイバーが十分に訓練されていれば、自然環境に害を及ぼすことはありません。ダイバーが環境にダメージを与えなければ、更に楽しむことができ、ダイビングや旅行にもっと出掛けられるようになります。このwin-winのシナリオによって、多くのダイビングトレーニング機関のスタンダードは引き上げられ、ダイビングのトレーニングコースはより良いものになりました。
そして、リーフチェックをはじめ、大学やNGOが海を保護するための研究活動のために行うデータ収集に、旅行者やダイバーが参加できるようになりました。この活動は「市民科学(シチズン・サイエンス)」と言われ、広く知られるようになりました。 (関連記事はこちら)
改善の余地
こうした進歩とイノベーションのおかげで、スキューバダイビングは今、環境への影響が比較的少ない環境に優しいアクティビティと見なされています。今後20年間で、さらに改善できるでしょうか?もちろん改善できると思っています!よりしっかりとしたダイビングのトレーニングプログラムは、改善に向け必須ですが、それだけでなく、旅行者はダイビング中に海に与える影響を改善するために他にも何かできるのではないでしょうか。
塵も積もれば山となるというもの。小さなサステナブルな活動が大きな違いを生むことがあります。たとえば水に入る前にだって、できることはたくさんあります。再利用可能なボトルを持参することで、使い捨てプラスチックによる汚染を減らすことができます。一部の日焼け止めはサンゴに深刻なダメージを与える可能性がありますが、海の生物に悪影響を与える化学物質を含まない環境に優しい日焼け止めを使用すれば、個人レベルでもサンゴの保護に貢献することができます。(関連記事はこちら)
また海洋生物と触れ合う際には、生物の生態を考慮し、より穏やかなアプローチをとる必要があります。インスタ映えする写真を撮るために海の生き物を追いかけたいかもしれませんが、それは生き物たちにストレスを与え、悪気がなくても生き物の命を危険にさらすことに繋がる可能性も。また、海の生き物に対して、強力な水中ライトを使用したり、写真を撮る際に何度もフラッシュをたいたりするのはやめましょう。特に被写体に近すぎる場合、繊細な生き物の目を傷付けてしまうかもしれません。
エコダイビング:明るい未来への歩み
ホテルやリゾートは、エコダイビング体験を提供することの重要性を認識し、海を保護しつつ旅行者に付加価値を提供することを目的として、NGOとのパートナーシップを始めました。The Oceancyという海洋保護のNGOは、「サステナビリティ改善プログラム」(SIP)と呼ばれるホテルの評価・査定プログラムを構築。これはサステナブルであるためにリゾートが満たすべき評価基準。この基準には、シュノーケリングやダイビングといったアクティビティだけでなく、廃棄物管理、スタッフトレーニング、ソーシャル・アカウンタビリティ(社会説明責任)も含まれます。
ソーシャル・アカウンタビリティ(社会説明責任)とは、アメリカのCSR評価機関であるSAI(Social Accountability International)が国際的な労働市場での基本的な労働者の人権の保護に関する規範を定めた規格です。詳しくはこちら。
このプログラムでは、旅行者である私たちが、海洋生物学者によるデータ収集の支援や、損傷したサンゴ礁へのサンゴ移植など、あらゆるサステナブルな活動やプログラムに参加することが奨励されています。
こういった取り組みの目的、海の自然を壊さないこと。
これからもっと多くのダイバーやリゾート、ダイビングツアー会社がエコダイビングを実践して、海を楽しみながら、海の自然を保護していくことを目指しています。
ダイビングの旅行中に海洋保護のデータ収集ボランティアやサンゴの修復プロジェクトに携わったことがありますか?もしないのなら、これから携わってみたいですか?
まだダイビングをやったことがない!という人。将来ダイビングにチャレンジしてみたいですか?
もしダイビングをしてみたいなら、ダイビングしながら海洋生物を保護するエコダイビングのコンセプトに沿ったダイビングのトレーニングを受けてみたいですか?
ダイバーと海の生き物、両方のここちよい場である海を守る一つの手段であるエコダイビング。ぜひチャレンジしてみたいですね!
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