
観光収入なく危機にある
世界の自然・野生動物・コミュニティ:
旅人が自宅で貢献できる方法
自然好きでサステイナブル志向の人は、旅でも自然を訪れることが多いようです。また、自然保護・自然学習にも興味があり、旅を通じてローカルコミュニティに貢献したいという気持ちがある人も多いでしょう。世界中を苦しめているパンデミックによって危機にある、自然、野生動物、そして旅を支える現地コミュニティ。旅や自然を愛する私たちが今、できることは何でしょうか。
Covid-19のパンデミックにより、観光業は世界中で大きな影響を受けています。エコツーリズムは観光の利益を地域社会に還元するという概念に基づいているため、エコツーリズムから得られる利益に依存している世界中の多くの地域は、今経済的に苦しんでいます。そして、エコツーリズムの利益はそのエリアの自然保護区、海洋生息地、野生生物保護区の保護活動にも利用されています。エコツーリズムがストップしたことで、これらの保全活動もできなくなり、その保全活動に従事している人々も苦しい生活を強いられています。さらに、生活が苦しくなった現地住民の中には、違法な密猟や焼畑など従来の自然を直接破壊する行為をして生活費を稼ぐ人も現れ、世界中で問題となっています。(Covid-19が野生生物にどのような影響を与えているかについての記事は、こちら。)
通常であれば、私たちもエコツアーに参加し、現地コミュニティ、現地の自然保護、野生動物保護に貢献できるのですが、旅ができないこの状況でもできることはあるのでしょうか。
パンデミックであるか否かににかかわらず、世界中に地域コミュニティ・自然保護や野生動物保護活動をしている非営利団体がたくさんあります。エコツーリズムの利益で保全されていた、現在危機にあるエリアで活動しているNGO団体を通じて、エコツーリズムがなくなったことで発生している問題や自然破壊、影響を受けている野生動物の保護に対して寄付などの方法で私たちも協力することができます。オンラインで寄付ができるシステムを設けているところが多く、自宅からでも簡単にオンラインで寄付をすることができるのです。
今回はパンデミックによるエコツーリズムの停止で大きく影響を受けているエリアで自然保護・野生動物保護などの活動をしている団体、且つオンラインで貢献できるシステムを設けている団体をいくつかご紹介します。
世界の様々なエリアのプロジェクトをしている団体
グローバル・ギビング (Global Giving)
グローバル・ギビングは、災害対応から教育、自然保護に至るまで世界中のプロジェクトの資金調達を専門とするグローバルなクラウドファンディングコミュニティ。このプラットフォームに参加している組織は審査に通った非営利団体で、 2020年6月現在、エコツーリズムの欠如による資金の大幅な削減のために支援が必要な野生生物保護活動として、ウガンダのウミガメ緊急基金や孤児および野生チンパンジーへの支援などのプロジェクトが掲載されています。
他にも、 Covid-19による経済的影響と闘うための取組みなど、コミュニティベースのさまざまなプロジェクトも掲載されています。
中南米
エコネキシオネス (Econexiones)
エコツーリズムの人気スポット、コスタリカの熱帯雲霧林で有名なモンテベルデでは、すべてのサイトが閉鎖された状況です。コスタリカでの観光活動の延期により、エコツーリズムで生計を立てていた多くの人々が取り残されています。 2019年、観光業はコスタリカのGDPの8〜9%を占め、モンテベルデだけで昨年は25万人を超える観光客が訪れました。このパンデミックを受け、コスタリカ政府は最大3か月間毎月最大220ドルを受け取ることができる短期救済活動を開始しましたが、3ヶ月の救済期間が終わった後、どうしたら良いかという点はまだ決まっていないようです。 エコネキシオネスは、地元のレストランに食品を販売している小さなコミュニティの生産者がオンラインで商品を販売できるようにするプラットフォーム。通常であれば、購入先となってくれていたはずのレストラン、ホテル、会場、ツアーはすべて閉鎖されているため、オンラインで商品を販売することは、小規模な地域の生産者がこのコロナ禍で余剰と見なされている商品を収入に変えることのできる、唯一のチャンスなのです。
ガラパゴス・コンサベーション・トラスト
(Galapagos Conservation Trust)
チリの沖にあり、ダーウィンの『種の起源』でも有名な世界の希少種が生息するガラパゴス島。英国を拠点とするガラパゴス・コンサベーション・トラストは、地域の生態学および海洋研究、島の復元、絶滅危惧種の保護と教育に重点を置き、活動している非営利団体です。現在、島のプラスチック汚染の削減や陸イグアナの個体数増加、鳥類・絶滅危惧種のサメ・ウミガメの保護などのプロジェクトに取り組んでいます。
ガラパゴス島は貴重な野生動物を観察しに世界中から観光客や調査団体が訪れるデスティネーション。一生に一度行きたいという人も多いところです。エコツーリズムの取組みも盛んで、観光収入での保全活動が行われてきたガラパゴスもコロナウイルスのパンデミックによって打撃を受けている地域のひとつ。ガラパゴスのコミュニティを世界中の人々が支援できるように、寄付のためのプラットフォームを立ち上げました。ガラパゴス島は大陸から離れた場所にあるため、入ってくる物資は限られています。そのため、地元の漁師や農家に病気の蔓延を防ぐのに役立つ個人用保護具を提供する取組みも行っています

ガラパゴス・コンサーバンシー (Galapagos Conservancy)
ガラパゴス・コンサーバンシーは、ガラパゴス諸島の自然と野生生物の保護活動に特化した、アメリカに拠点を置く団体。ガラパゴス・コンサーバンシーは、巨大な陸亀の保護活動、持続可能性の教育、持続可能な社会と野生生物と生態系の保全に向けた活動をしています。野生生物と生態系保護の取組みにより、長期的な生態学的損傷の島の生態系への悪影響、絶えず増加する人口、および在来種と環境にダメージを与える攻撃的な外来種の駆除などにも対応しています。
ガラパゴス・コンサーバンシーは現在、ガラパゴス国立公園総局、ガラパゴスバイオセキュリティエージェンシー、およびCovid-19パンデミック時に島の保護に取り組んでいるその他のパートナーに向けた寄付を受け入れており、ウェブサイト上で寄付をすることができるようになっています。
アフリカ
ブルー・ベンチャーズ (Blue Ventures)
ブルー・ベンチャーズは、持続可能な海洋保護の取り組みと沿岸コミュニティへの利益に重点を置いた非営利団体。特にアフリカのマダガスカルで長い間保全活動をしてきました。ブルー・ベンチャーズの保護活動には、漁業と海洋保護区の再建、湿地の生息地の保護、マングローブと海草、水産養殖、地域の健康・教育への取組みなど、海と地域コミュニティに特化しています。 Covid-19のパンデミックは魚市場、観光業、レストランとの貿易の不足に悪影響を及ぼしているため、沿岸のコミュニティはウイルスの経済的影響に苦しんでいます。ブルーベンチャーズは沿岸のコミュニティと長年の関係を築いており、Covid-19により観光がストップしたことで失業に苦しむ人々に他の雇用手段を見つける取組みをしています。その一例が、観光客のために昼食を販売していた女性グループのプロジェクト。観光が完全に停止してしまい、彼女らの収入はなくなりました。そこでコミュニティの協力を得て、現在個人保護用のマスクを作成し、コミュニティに販売しています。こういった、沿岸地域の人々が仕事を通じて生活できる収入を得られるようにする仕組み作りは、パンデミックの間にブルーベンチャーズが地域社会の保全を行っている手法の一つ。寄付はウェブサイト上で行うことが可能です。
マートラスト(The Maa Trust)
日本でも有名なケニアのマサイ族も観光を大きな収入源としていたコミュニティの一つ。観光がストップしてしまったことで、大事な収入源がなくなってしまいました。
マートラストは、ケニアのマサイ族を対象とした活動をする非営利団体で、マサイにあるコミュニティ所有の野生生物保護団体と協力して活動しています。彼らは現在、パンデミックの影響を受けているコミュニティに住む何百ものマサイの家族を支援するため、資金を調達することを目標に募金活動をしています。寄付の対象は次のとおり。
・移動式医療キャンプでの病気の子供のための薬を購入する
・マサイ族の家族に合わせて、蜂の巣の50%を購入する
・ビーズアシスタントの月額給与(これにより、110人の女性がビーズの手工芸品作りに参加できるように)
・マートラストが活動で使用する車両の1か月の費用
・ 寄宿舎の小学校の奨学金。子供を1年間完全にサポート
・ 若い人のための職業訓練コース
・小学校用の15,000リットルの雨水貯留システム
・200〜300人にサービスを提供する農村地域の1日無料のモバイル医療キャンプ
・ 600人のコミュニティに安全な飲料水を提供する雨水貯留
今回ご紹介したのは、Covid-19のパンデミックによって止まってしまったエコツーリズムにより大きな影響を受けているエリアで保全活動をする非営利団体のほんの一部です。世界中で多くのデスティネーションがパンデミックの影響で直接的・間接的に苦しんでいます。そして、これらのコミュニティの苦しみを取り除き、地球の自然を今まで同様保護していこうと一生懸命活動している多くの団体があります。こういった世界の状況を他の人と共有したり、寄付をしたり、と自分の家からでも、間接的に貢献できる方法があるのです。旅行に行けない今、また今までと同じように旅を楽しめる将来が来るように、今の私たちでも何か地球のためにできることを探してやってみる、というのはいかがでしょうか。
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