エコツーリズムとオーストラリアの先住民族
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エコツーリズムと
オーストラリアの先住民族

世界で6番目に大きな国土を持つオーストラリア。多様な動植物が生息しており、美しい海岸線、赤い砂漠、手つかずの熱帯雨林が広がっています。 また、日本ではアボリジニと呼ばれている「オーストラリアの先住民」の文化は現存する世界最古の文化のひとつであり、独特な習慣や土地との結びつきは類を見ません。

そんなオーストラリアでは、先住民の文化を肌で感じることができるエコツーリズムの重要性が高まっています。

エコツーリズムとは?

グローバル・エコツーリズム・ネットワーク(GEN)の定義によれば、エコツーリズムは「環境を保護し、地元の人々の幸福を維持し、訪問者、スタッフを含むすべての関係者の解釈と教育を通じて知識と理解を生み出す自然地域への責任ある旅行」のこと。

持続可能な環境への取り組みと政府による支援で「エコツーリズム先進国」と言われているオーストラリア。地球上で最も古い文化の一つと言われる「アボリジニ文化」の保護も重要視されており、特色のある先住民の慣習を伝える1つの手段としてエコツーリズムが注目されているのです。

オーストラリアの先住民と土地とのつながり

オーストラリアの先住民であるアボリジニの500以上の部族は、4万年以上前にオーストラリアに移住してきて以来、持続可能な漁業、狩猟、農業を実践し、大地を大切にしてきました。彼らは山火事を防ぎ、植物の成長を促すための乾季の野焼きの必要性も理解していました。

オーストラリアに上陸したヨーロッパ人探検家が描いた「野蛮な」イメージとは程遠く、文化は豊かで変化に富み、部族によって語り継ぐ物語や伝説もさまざまです。彼らの習慣や歴史は、書き残す代わりに、「ドリームタイム」と呼ばれる人類誕生前の時代からずっと続く物語によって受け継がれてきました。彼らの文化は全体論的で、自己、精神、家族を土地と結びつけることに重点を置いています。

しかし、1788年イギリスの第一艦隊の来航により、アボリジニのコミュニティは壊滅的な打撃を受け、その後、大量虐殺や強制的な同化により多くの慣習が失われました。現在、オーストラリアの先住民は全人口の約3.3%を占め、79万8千人以上のアボリジニとトレス海峡諸島民が都市部や遠隔地で暮らしています。

オーストラリアにおけるエコツーリズムの奮闘記

オーストラリア政府は近年、アボリジニのコミュニティーのために持続可能なエコツーリズムの実践に向けて大きく動き出しました。2004年に遺産観光省が発表した「持続可能な観光へのステップ」には観光・遺産・環境の持続可能な未来を促進し計画するための明確な道筋が示されています。しかし、オーストラリアのエコツーリズムを取り巻く問題は依然として残っており、観光産業とアボリジニ文化や慣習の保護とのバランスはまだ取れていないのが現状です。

ウルル

観光とアボリジニの文化の共存の難しさの代表格になっていたのが、ウルル。かつてエアーズロックと呼ばれていたこの神聖な一枚岩は、1985年に歴史的な所有者である先住民に返還されました。しかし、アボリジニの慣習や信仰を知らない人たちから無礼な扱いを受けることもあり、2019年にこの巨岩に登るツアーは非合法化されました。

オーバーツーリズム(過剰観光)

オーバーツーリズムとは、観光地が物理的または心理的な面で、キャパシティを超えてしまうことを指します。これは、観光客の体験の質を低下させ、地元の人々や環境に深刻な影響を与える可能性があります。

つい最近まで、オーストラリア政府観光局の政策は成長路線でした。「ツーリズム2020戦略」では、2009年の700億豪ドルから大幅増となる1150億オーストラリアドル以上の観光客による支出を達成する計画が明確に示されています。

そして2021年7月、オーストラリア政府観光局は「先住民観光基金」を発表しました。 このファンドは、アボリジニが経営する60以上のビジネスに最大1200万豪ドルの小規模ビジネス補助金を提供し、オーストラリア全土で先住民による観光を増やすことを目的としています。

遠隔地コミュニティ

オーストラリアでは、多くの先住民がリモート・コミュニティ(大都市から遠く離れた地域)に住んでいます。これらのコミュニティは、オーストラリアの法律で保護されており、アボリジニの文化や慣習に基づいた伝統的な生活を営んでいます。しかし、アボリジニのコミュニティは、人里離れたところにあるため旅行者が媒介した病気の犠牲となったり、伝統や文化に無知な旅行者から伝統的な慣習に対して侮辱を受けることもあります。

オーストラリアのアボリジニ文化が体験できるエコツアー

オーストラリアではエコツーリズムの人気が高まっており、ユニークで持続可能な体験を求める旅行者をターゲットとした旅行会社が増えています。

オーストラリアには透明性の高いエコツーリズムの認証制度があるため、本当にサステナブルな運営をしている企業を簡単に見分けることができます。例えば、Respecting Our Culture(ROC)認証は、先住民の文化遺産と先住民コミュニティの生活文化を尊重し、強化する運営をしている企業を認証する制度です。

アボリジニが経営するエコツーリズム体験の例

アヤル・アボリジナル・ツアーズ・カカドゥ

オーストラリア北西部に広がるカカドゥ国立公園は、オーストラリアの中でも一際ワイルドで美しい自然保護区。アヤル・アボリジナル・ツアー・カカドゥは、アボリジニが所有・運営するエコツアー会社で、神聖な公園の自然と文化体験を提供しています。ツアーでは、マゲラ川の氾濫原を横断して、ロックアートを見ることができる遺跡であるウビルーを訪れます。地元ミニジャ(Minitja)族のビクター・クーパーが運営するこのツアーでは、知識豊富なガイドがドリームタイム(その地に伝わる伝承)やオーストラリア先住民の自然や土地の精神とのつながりについての話を聞かせてくれます。

アヤル・アボリジナル・ツアーズ・カカドゥは、エコツーリズム・オーストラリアの認証プログラムにおけるグリーン・リーダーで、2018年よりROC認証を取得しています。

南オーストラリア州のアボリジナル・カルチュラル・ツアー 

アボリジナル・カルチュラル・ツアーでは、オーストラリアの先住民の視点で風景を眺めることができます。ナルンガ族やガジュリ族の古代の遺跡や聖地を訪れ、自然と触れ合い、オーストラリアの先住民の祖先の道を歩いてみましょう。「アウトブッシュ・ツアー」、「海岸ツアー」、またはその両方を組み合わせることで、アボリジニ文化をより深く知ることができます。

アボリジナル・カルチュラル・ツアーズは、ナルンガ族のクエンテン・アギウスが経営しており、ROC認定とグリーン・リーダーを取得しています。

ブレマン島のバヌバヌ・ビーチ・リトリート

ブレマン島の地元住民と北東アーネム・ランドのヨルング族との協力で作られたブレマン島のバヌバヌ・ビーチ・リトリートは、そこに住む部族のアボリジニ文化のバランスがとれた素晴らしいリラックススポット。宿泊客は、アラフラ海を見渡すグランピング・スタイルの宿泊施設で、ウェルカム・トゥ・カントリー・ツアー、持続可能な漁業、伝統的なヨルング・ヒーリング・セレモニーなどのアボリジニの慣習を体験し、土地とのつながりを感じながら過ごすことができます。

バヌバヌ・ビーチ・リトリートは、エコツーリズム・オーストラリアの認定を受けており、ディスカバー・アボリジナル・エクスペリエンス・オーストラリアのメンバーでもあります。

オーストラリアの先住民が経営するROC認定エコツーリズム企業の全リストは、オーストラリア政府観光局のウェブサイトで確認することができます。

オーストラリアのエコツーリズムでアボリジニの文化を学ぶオーストラリアでアボリジニの文化や伝統について学ぶことは、太古の歴史に触れる特別な体験になることでしょう。ツアーを選ぶ際は、ROC認証を受けた会社が運営しているか、地域社会や環境にも貢献するものかを確認してくださいね!



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