
電動スクーターは本当にサステナブル?
最近、世界中で同じような電動スクーターに乗っている人を見かけます。日本でも見たことがある人がいるかもしれませんね。ヨーロッパをはじめ多くの大都市では、グリーン交通プログラムの一環として、市内で電動スクーターのシェアライド試験運用が行われています。今急速に普及してきている電動スクーターは、一見電動でサステナブルな乗り物に見えますが、本当に環境に優しいのでしょうか。今回は、電動スクーターとサステイナビリティの問題について考えてみたいと思います。
電動スクーターは世界中で大人気
アメリカのほとんどの都市では、2018年まで電動スクーターをマイクロモビリティ計画に含めていませんでしたが、各都市に電動スクーターが導入されると、その人気は一気に高まりました。全米都市交通関係者協会(NACTO)によると、2019年、米国では電動スクーターが8600万回も利用されたということです。これは、米国の多くの都市で試験的に導入された、わずか2年目とは思えないほどの数字。また、2019年には109都市でドックレススクータープログラムが実施され、2018年からほぼ50%増加しました。例えばシカゴでは、1社のみが展開しており、Divvyが市場を席巻しています。
そして、環境対策に熱心なイメージのヨーロッパでも、多くの都市で電動スクーターが導入されています。例えばパリでは、市民や観光客が利用できるスクーターがなんと15,000台以上!また、アムステルダムを拠点とする新興企業Dottは、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランドの12都市で3万台の電動スクーターを導入し、その保有台数を拡大しています。
電動スクーターの問題点
多くの人が環境に優しい交通手段という印象を持つ電動スクーター。実は見かけほど「グリーン」でないことを知らないかもしれません。ノースカロライナ州立大学の研究者は、電動スクーターでの移動は、バス、自転車、原付、徒歩での移動よりも、1マイルあたりの温室効果ガス排出量が多いことを発見しました。一般的な自動車の415gであるのに対し、スクーターは1マイルあたり20gの二酸化炭素を排出していると言っています。
環境に優しくないのは電動スクーターを利用することではなく、実は電動スクーターの素材や、スクーターを見つけて充電し、元の場所に戻すために毎日働く会社。温室効果ガス排出量に大きな影響を及ぼしているのです。
ケンタッキー州ルイビルにあるBirdという電動スクーター企業の利用者データを分析したところ、電動スクーターの平均寿命はわずか28日であることがわかりました。 1台のスクーターの寿命が短いということは、電動スクーターをたくさん製造し、各地に出荷する必要があるため、多くの温室効果ガスを排出することにつながるのです。電動スクーターは、製造時に温室効果ガスが発生することで知られています。各スクーターごとにバッテリーを作る必要があり、これが大きなカーボンインパクト(二酸化炭素ガスの排出による影響)の原因となっています。
電動スクーターだけでなく、その他の超小型モビリティの人気が高まる中、環境に優しい交通手段の実態を理解することが大切。消費者としては、製品だけでなく、生産サイクル全体や製品による全体的な影響を見ることが必要不可欠です。
電動スクーターのもうひとつの大きな問題は、その使用方法によって大きなカーボンインパクトを生み出すということです。電動スクーターが荒らされたり、湖に投げ捨てられたり、粗末に扱われると、都市はそれを交換したり修理したりしなければならず、より大きなカーボンインパクトを与えることになります。
私たちが電動スクーターを使用するのは、ほとんどが近場。徒歩や自転車で済む距離です。少しだけ家を早く出て、街の景観を楽しみながら散歩をしたり、自転車で移動しませんか?
その方がずっと環境に優しいですよ。
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