
動物の橋で野生動物を守ろう!
「動物の橋」という言葉を聞いたことがありますか?高速道路などで分断された野生動物生息地帯に、高速道路の上または下に作られた動物専用の通り道のこと。野生動物が高速道路で事故に遭ったり、生息地が断片化したりしないようにしています。意外と知られていないようですが、生態系を保護するために、動物の橋が世界中で作られています。私たちが旅をする際使う高速道路と野生動物の関係。旅と自然、野生動物が好きな人には是非知っておいていただきたい情報です。
通常、野生動物が高速道路を横断する必要がある場合、道路を命がけで渡るしかありません。でも、それは動物に対して非常に残酷なこと。毎日普通に生活していたエリアに、ある日突然、簡単に行けなくなってしまうのです。その土地で生まれ、生活しているだけなのに、人間がやって来て、その真ん中に死の罠が作られたのです。
例えば、アメリカのユタ州の1か所の高速道路沿いで、わずか2年間に98頭の鹿、3頭のヘラジカ、2頭のヘラジカ、複数のアライグマ、およびクーガーが車との衝突で事故に遭い、合計106匹が死亡しました。アメリカには絶滅危惧種21種が生息しており、フロリダのキーディア、カリフォルニアのオオツノヒツジ、アラバマ州のアカハシガメなどが、道路での死亡により生存が脅かされています。最近報告された15年間で、野生生物と自動車の衝突は50%増加し、毎年100〜200万頭の大型動物が車との衝突によって殺されています。
一つの策として、「動物横断」の標識を掲げ、ドライバーが気をつけるという方法がありますが、動物が危険を犯して自分の生活を続けることに変わりはありません。
また、動物との衝突事故が多いことは人間側にとっても大問題です。アメリカの高速道路交通安全局によると、米国では100万回を超える自動車事故で毎年約200人が亡くなり、80億ドルを超える修理やけがをしたと推定されています。さらに、衝突事故は金銭的にも負担が大きいものです。鹿と車の衝突の費用は平均で8,190ドル、エルクと車の衝突では約25,319ドル、ヘラジカと車の衝突は44,546ドルで、人身傷害と死亡、けん引、車両の修理費用などがかかります。
そこで、「動物の橋」という解決策が生まれたのです。
野生動物の橋や地下道を作ると、動物は安全に渡れる通路だと認識し、使い始めます。こうして野生動物が道路を安全に通過するのを助けているのです。
動物の橋とは
動物の橋は、エコダクトまたは野生動物の交差点とも呼ばれ、高速道路などの人造の障壁を動物が安全に横断できるようにする構造です。野生生物の横断用としては、高架橋、地下道のトンネル、両生類のトンネル、魚のためのはしごなどがあります。
通常、動物の橋は、動物がこの橋をストレスなく使えるように多くは自然な形で覆われていて、あまり目立ちません。気づいていないだけで、私たちも動物の橋の下を通ったことがあるかもしれません。
動物の橋、そんなものがあるのか!と思った方もいると思います。が、これは新しいものではありません。
歴史ある動物の橋
1950年代、ハンターがシカを導く手助けをするためにフランスで建設された動物の橋が世界初と言われています。以来、ヨーロッパではたくさんの動物の橋が建設されました。
また、カナダやアメリカでも、これまで約30年間動物の橋を建設してきました。
アメリカでは過去30年間に暗渠、橋、高架を含む数千の野生生物の橋が建設され、これらはモンタナ州の山ヤギ、マサチューセッツ州の斑点サンショウウオ、コロラド州のビッグホーン羊、カリフォルニア州の砂漠のカメ、フロリダの絶滅危惧種のフロリダパンサーの保護などに使用されています。
ヨーロッパで始まった動物の橋、今では世界中に広まっています。
動物の橋の役割
動物の橋は車と野生動物の衝突を回避するのにも役立ちます。前述の通り、野生生物を殺したり負傷したりすることだけでなく、人体や物的損害も回避できるということです。
さらに、野生生物の横断をサポートすることで、彼らの生息地を保護し、生息地間の繋がりを保ち、生息地が断片化することを防ぎます。
それだけではなく、高速道路によって妨げられる可能性のある交配を促進するという意味でも動物の橋は重要なんです。野生生物の交配は、種の生存にかかわります。エリア間の移動ができないことで、集団がお互いを見つけることができない場合、局地的な絶滅が起こる可能性があるためです。
カナダのバンフ国立公園では、フェンスと動物の橋の組み合わせにより、交通事故の発生率が80%減少したと報告されています。アメリカのアリゾナ州がエルクのために特別に構築されたフラッグスタッフと12を超える地下道と高架を設置した後、交通事故の数は90%減少したというデータもあります。
コストはかかるものの、できるだけ多くの動物の橋を設置した方が良さそうですね。。
世界中にあるユニークな動物の橋
今では世界中に作られている動物の橋。様々なエリアで様々な動物が活用しています。
◆アメリカ
例えば、アメリカのワシントンにあるNutty Narrows Bridgeはロープでできており、リスが道路を簡単に横断することができます。また、オレゴン州とワシントン州では、水域を横断する道路の下に建設された暗渠が拡大され、魚などが活用しています。
1980年代、マサチューセッツ州のサンショウウオは、アメリカの都市部でこの「動物の橋」の恩恵を受けた最初の動物の一つでした。地元の人は毎年春に「バケツ旅団」を結成し、ヘンリーストリートの片側の森の隠れ家から反対側の繁殖池にサンショウウオを運びました。1987年までに、保存主義者と公共事業担当者が公式の地下道を建設し始め、現在では、毎年100〜200匹のサンショウウオ(および小さなカエル)がトンネルを通過しています。
また、コロラド州のデュランゴとベイフィールドの間のハイウェイ160の下には、2016年に地下道が作られました。リモートで撮られた写真によると、通路は鹿、コヨーテ、アライグマ、その他の小動物によって毎日使用されているそうです。
◆オーストラリア
オーストラリアにはさらにユニークな動物の橋があります。クリスマス島にある動物の橋は、通常の陸橋よりもかなり小さく、毎年5千万匹のアカガニが回遊ルートで移動するため利用しています。
また、ブリスベンでは、悪名高い危険のあるコンプトンロードの上に、重いロープで編まれた3つのキャノピーブリッジがあり、モモンガやフクロネズミが空をスイングできるようになっています。

◆ヨーロッパ
オランダには、なんと66もの高架道路とエコダクトといった動物の橋があり、Naturubrrug Zanderij Crailooという線路、川、ビジネスパーク、スポーツ複合施設、ゴルフコースを横切っている世界で最も長い約800mの動物の橋があります。そこでは、主にアナグマ、イノシシ、シカの個体群を保護しています。
ノルウェーのオスロには「蜂のハイウェイ」があります。絶滅の危機に瀕しているミツバチの個体数を保護するために、地元の人々が屋上や公園内に所定のルートに沿って花を植え始め、ミツバチは今、幸せに街中を移動することができるようになっているようです。
◆日本
日本にも事例があります。
光を辿って移動して路頭に迷うカメ。2002年から2014年の間、線路を渡るカメが、京都と奈良で13の列車の混乱を引き起こした事件がありました。それらのカメを救い、事故を防ぐため、西日本旅客鉄道のエンジニアと須磨海浜水族園は既存の線路の下に特別なU字型のカメの道を作成しました。その後カメは列車がきても、行き詰まったり潰されたりすることなく、線路を横切ることができるようになったようです。
◆アフリカ
アフリカでは、象のような大きな動物が断片化された群れのメンバーと再会できるように、象の通り道を作っています。

◆カナダ
動物の橋の成功例として最も注目されているのは、カナダ、アルバータ州のバンフ国立公園です。1996年に最初に動物の橋が建設されて以来、2014年までに38か所の地下道と6か所の動物の橋が設置され、15万を超える大型哺乳類の横断を記録しています。バンフ国立公園の動物の橋の数は世界の他のどの公園よりも多く、オオカミ、コヨーテ、クーガー、ヘラジカ、シカ、オオツノヒツジ、そして最近ではウルヴァリンとオオヤマネコ他、11種類の大型哺乳類を助けています。

人間と動物が共存するために編み出された動物の橋。
旅行にいった際、森林地帯の道路を通る際は、意識して上を見上げてみてください。
野生動物たちが活用する「動物の橋」を見つけられるかもしれません。
環境に優しい旅についてもっと知りたいですか?
次の旅のインスピレーションに、忙しい毎日のちょっとした息抜きに。
Ecotourism Worldのニュースレター配信登録はこちら。

